光の粒子説と屈折

光を粒子だと思って屈折が説明できたとしても、屈折する粒子と反射する粒子の比は力学の中からは出てきそうもありません。そういった意味で現実を説明する理論としては終わってますが、遊ぶことはできます。

この文章の目標


歴史的には、フーコーの実験により粒子説は否定されたと説明されることがある。特殊相対性理論を知っている現代人の視点としては、光を非相対論的粒子(必然的に質量を持つ)と仮定して妥当な結論に至らないのはほとんど当たり前だが、相対論的に扱った場合、どうなるかは考えてみないと分からない。この文章では、光を質量0粒子だと仮定して、フーコーの実験結果を説明することに挑戦してみた。

問題


空気中の光は水面に入射すると屈折する。このことを光を質量0の粒子と仮定して説明を試みる。簡単のために、二つの半空間1,2があり、互いに1つの平面で接合しており、光は半空間1から2へ入射したとして説明する。
座標は、空間の均質な方向をx軸、それに垂直で1から2への方向をy軸にとる。入射角度とy軸となす角と屈折した角度と-y軸のなす角をそれぞれ\(\theta_{1},\theta_{2}\)とし、半空間iでの光の速度を\(\boldsymbol{v}_{i}\)とする。

使える性質


以下の説明で断りなく使っている性質の一覧。

  • 半空間のそれぞれの速度の上限を\(c_{i}~~(i=1,2)\)とする(仮設)

  • エネルギーは屈折の前後で保存する(仮設)

  • 粒子ならば、ハミルトニアン\(H = c\sqrt{p^{2}+(mc)^{2}}\)に従って運動する。\(c\)は速度の上限。(理論)

  • 運動はハミルトンの運動方程式に従う(理論)

  • 粒子の質量が0ならば、粒子の速度は速度の上限に等しい(導)

  • x方向の運動量は保存される(導)


(仮設)は、説明のために無理矢理ここででっちあげた仮説、(理論)は一般的な力学の理論、(導)は仮設と理論から導かれる性質を意味する。(導)については、最後に説明する。

解答


エネルギーは屈折する前後で変化しないので、半空間における運動量をそれぞれ\(p_{1},~~p_{2}\)とすると
\[ E = c_{1} p_{1} = c_{2} p_{2}\]
x軸方向の運動量は保存するので
\[ p_{1}\sin \theta_{1} = p_{2} \sin \theta_{2}\]
である。従って\(\theta_{1},~~\theta_{2}\)の関係は
\[ \frac{\sin \theta_{1}}{\sin \theta_{2}} = \frac{p_{2}}{p_{1}} = \frac{c_{1}}{c_{2}}\]
になる。質量0の粒子の速度は、速度の上限に等しくなるのだから
\[\frac{\sin \theta_{1}}{\sin \theta_{2}} = \frac{v_{1}}{v_{2}}\]
になる。

考察


光を非相対論的な粒子と考えて屈折を説明しようとした場合、半空間iにはそれぞれ一様なポテンシャルを持って、屈折をする瞬間に力がy軸方向に力が働くとして説明する。x方向の運動量保存則から
\[\frac{\sin \theta_{1}}{\sin \theta_{2}} = \frac{v_{2}}{v_{1}}\]
になり、相対論的な場合とほぼ同じだが、運動量の形が違うので、全く逆の傾向があらわれる。半空間1が空気、半空間2が水だとすると\(\theta_{1} > \theta_{2}\)なので、相対論的な場合は\(v_{1} > v_{2}\)、非相対論的な場合は\(v_{1} < v_{2}\)になる必要がある。フーコーの実験では\(v_{1} > v_{2}\)になることが確認されている。

粒子説の弱点


今回は屈折のみに集中して考えたが、光は同時に反射もする。粒子で考えた場合、やはり適当な仮説を設ければ反射角も説明できる。しかし上にも書いたように、屈折する粒子と反射する粒子の比率を力学の中で説明することは不可能に思える。

粒子の質量が0ならば、粒子の速度は速度の上限に等しい


質量0粒子のハミルトニアン
\[ H = c\sqrt{p^{2} + (mc)^{2}} = cp\]
である。ハミルトンの運動方程式より
\[v_{i} = \dot{x_{i}} = \frac{\partial H}{\partial p_{i}} = c\frac{p_{i}}{p}\]
である。従って\[v = c\]が得られる。

x方向の運動量は保存される


半空間iでのはミルトニアンは\( H_{i} = c_{i}p\)だから、空間iで\(c_{i}\)の値を取る関数\(c(y)\)を使って全空間でのハミルトニアン
\[ H = c(y)p\]
と書くことができる。ハミルトンの運動方程式より\(\dot{p}_{x}\)は
\[\dot{p}_{x} = -\frac{\partial H}{\partial x} = 0\]
だから、運動量のx方向は保存する。半空間1から2へ移動する前後で\(c\)が変化するので、そのときに何らかの力が働く。